好き! 『説得』ジェイン・オースティン、廣野由美子訳(光文社古典新訳文庫)

『説得(説き伏せられて)』は好きで、いくつかの日本語訳で読んだことがある。

けれども、この本は研究者による傍注つきで、それがとてもよい。

 

あと、後半が相手の気持ちがわからず不安なアン・エリオットとウェントワース大佐、二人の恋愛小説であることを強く感じた。

作者自身は婚約もせず、復縁もなかったようなのに、心理の描写が細やかですごい。

 

聡明で優しいアンも、自分の恋愛のために色々と仕組むところが面白い。

 

すばらしい彼女に比して、顔の美醜への関心や虚栄心しかない父親サー・ウォルターや、姉のレディ・エリオット、自己中心的な妹メアリーへの風刺の辛辣なこと。

愚かな親や妹に対する容赦ない描き方、突き放した結末は『高慢と偏見』も同じだけれど――この点が現代の商業的な創作とは大きく異なる。

 

メアリーの嫁ぎ先であるマスグローヴ一家の活気や、善良で愛情深い様子を評価しながらも、次のように書かれているところが印象的。

「自分の知り合いのなかでは、いちばん幸せな人たちだと思っていた。とはいえ、幸い私たちはみな、自分に対する自尊心の手前、人と交代したいとまでは思わないもので、アンも、自分の品位と教養を、彼女たちの楽しい生活と交換したいとは思わなかった。」

――そう、アンにも、『高慢と偏見』のエリザベス・ベネットにも、凡百の人に埋もれない個性がある。

そういう人物がヒロインのコメディなのだから、自分が好きなのも当然だなあ。