唐招提寺展・愛と孤独、そして笑い展

http://www.geocities.jp/utataneni/art/new.htmlで加筆訂正します


唐招提寺展』 『愛と孤独、そして笑い 展』

 ディズニーランド、ディズニーシーに行ったのだが、だんだん、その前に寄ったこの展覧会の、がっしりしてたくましい四天王像や、とちゅうで寄った『MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い 展』(東京都現代美術館)の幻想的な大絵画のほうが心に迫ってくる。灼(や)きついている。
 友人とディズニリゾートで遊んだり、見た花火も楽しかったけれど。

 とくに、『MOTアニュアル2005』。とくに鴻池朋子さん。
 あんなに心ときめくものがあるなんて。飛び交うナイフ。跳躍する狼(オオカミ。狐らしい)。団子みたいになったオオカミのかたまりや、一匹の狼(キツネ)からは、女の子の足がのぞいている。女の子は狼にくるまれているのか。守られているのか。それとも女の子の上半身は、毛むくじゃらの狼なのか。
 飛びまわっている狼たちは、無数のナイフを呑みこみ、吐き出し、そうして死んだりして、この少女を守っているように思う。顔の見えない少女がうらやましい。
 この作家の『第4章 帰還−シリウスの曳航』(“The Return”--Sirius Odyssey)はとても荘厳、壮大、宇宙を感じさせる絵だ。この大画面に会えてうれしい。狼のかたまりから生えている、光り輝く大きな虫の羽がうれしい。画面下の逆巻く緑色の海がうれしい。それから、むかって右に垂れ下がっているツル(植物)の先っぽにとまっているものが、緑色に光る黄金虫(コガネムシ)であることもうれしい。
 狼は、犬に見えるし。好きなものだらけなのだ。加えて、タイトルもいい。シリウスは犬の星だ。それから、オデッセイという言葉。
 ミュージアム・ショップで、この人が挿絵を描いている『澁澤龍彦ホラー・ドラコニア「狐媚記」』(平凡社)を購入。棚にあるうちでは最後の1冊だったため、ビニールのカバーがついていた。
 澁澤の小説はいまひとつ、つまらない。瀬尾まいこ図書館の神様』のほうがいいと思う。編集前記にもなじめない。


 主婦が踊りまくった挙げ句最後に台所で自殺する、岡田裕子の「Singin' in the pain」も気に入った。これは国宝だと思った。
 こちらのほうが、今日的で、多くの人にとって価値があるかもしれない。でもわたしは鴻池さんの絵が好きだ。いままで見たことがないタイプの絵だけど、わたしの心のそばにあるような絵だ。
 碧色の目の少女の絵がある。唯一の素顔だ。あの狐少女だろう。“すべての清純なものを、汚れなきものを−−”とかあったけど、清浄化、浄化される絵だ。カタルシス。永瀬清子さんの詩「諸国の天女」をおもった。
 ほかの作家のものをみてまわっても、また見たくなる。「Knifer life」とか。尖った絵。シャープな絵。あとは「シリウス」の心に残る光り輝く色合い。

 岡田さんの主婦のビデオにもどるけど、これもおもしろい。興味深いし、レポーターの男性は「セックスは…」としゃべるところなんか、文字通りおもしろい。
 ほかにもいい作品があった。“秘密”も書いて、引き出しに入れてしまった。
 カタログの文章(笠原美智子)もいい。『ブリジット・ジョーンズの日記』や『セックス・アンド・ザ・シティ』のことがでてくる。
 サブタイトルもいい。「シビアな<今>を生きるために」。とくに英語。「for survval」
 高階秀爾さんに感謝。朝日新聞に掲載された、この人の評を読んで、なにか惹かれて行ったのだが、ほんとうによかった。2005年最高の展覧会にもう出会ってしまったかもしれない。
 わたしとしては、ひとつ階段をのぼれたような気がする。現代美術(アート)と自分の関係、自分にとって何なのかがわかってきた気がする。
 昔の美術品よりも、『MOTアニュアル2005』のほうがわたしには必要だ。レオナルド・ダ・ヴィンチとかにくらべれば無名で、新しい人々(アーティスト)のほうが。



 『唐招提寺展』でいちばんよかったのは、木組み。屋根の。美しいし、その技術に圧倒された。
 つぎに鑑真和上像。列に並び、横から見ているときはそうは思わなかったけど、正面にまわると、すばらしかった。アクセサリーはつけていないし、服装もシンプルな、実在した人物の人物彫刻のほうが、理想をきわめているような仏像よりもいいと思った。
 ついで、四天王像。