「日本のわざと美」展−重要無形文化財とそれを支える人々−

http://www.geocities.jp/utataneni/art/new.htmlで加筆訂正します


「日本のわざと美」展−重要無形文化財とそれを支える人々−』  群馬県立近代美術館  1/8−2/6


 これを「開館30周年記念」にすればよかったのに。すばらしい人形たちがすばらしいキャンペーンガール、マスコットになった。

 開館〜の『西洋の誘惑』は、館長の著書のタイトルでもあったらしい。あの企画展は悪くはなかった。でも、本展のほうが惹きつけられた。

 展示されていたのは工芸品。工芸は西洋美術史において、建築、彫刻、絵画の順で芸術(美術)の最下位におかれていたらしい。

 しかし、もしかしたら、わたしたち日本人は絵画よりも、また街角や公園の彫刻よりも、はるかに食器、家具、調度、人形、箱、紙、衣服などの “持ち物” を愛しているのではないか。住居の空間に置かれ、生活を彩る “物” が、日本のモナリザであり、日本のミロのビーナスなのではないか。

 よかったもの

 宗廣力三「紬織着物朱赤丸文格子」  すごくいい! モダン。Tシャツのような服に仕立て、ふだんさらっと羽織りたい。

 堀柳女 衣裳人形「古鏡」  これもすごいいい。4番目にほしい。鏡を胸にあてているところ。オリエントを思わせるようなエキゾチックな衣服。それは正倉院にありそうな模様に、網がかかっている。ヘアスタイルは東京国立近代美術館工芸館『近代工芸の名品―花』で出会った人形とおなじだと思う。

 林駒夫 桐塑人形「青衣女人」 源氏物語にでてくる「召人」(めしうど)のひとりみたいだと思った。光源氏(源氏君)が魅了され、肉体関係をもちながらも、源氏君からは女主人、作者紫式部からはヒロインとして、扱ってはもらえない女たち。少女像よりも、この中年女性、おばさんのほうが好きだ。3番目にほしい。

 鴨下春明 彫金「火焔金具」

かわいい。2番目にほしい。とてもちいさい品。

 藤原啓「備前焼 壺」

何とも言えないかわいい形。本展で一番ほしくなった物。


そのほかよかった物

 富本憲吉の壺。平屋の絵がいい。青い筆さばき(染付である)
 藤本能道  リアルな雀の絵が印象的。

 三代徳田八十吉  彩釉磁器「耀彩鉢「心円」」  すき!
 三浦小平二の青磁蓋物  おだんごの髪型の菩薩のような童子がかわいい。
 五代伊藤赤水 「無名異練上花紋鉢」  無名異焼き。こんなものがあるのか。
 三輪休和 萩焼「萩水指」  でこぼこした、変な形がいい。
 三輪壽雪 「鬼萩割高台茶碗」  砂糖がけみたいでいい。
 金城次郎 琉球磁器「魚文抱瓶」  魚がいい。

 喜多川平朗 「上代無文羅」  濃い赤色というのだろうか、いい!
 北村武資  「碧地透文羅裂地」 透文、羅裂がいい。
 小川規三郎の博多帯  ラブリー。
 平良敏子  芭蕉布の透けている感じ、素朴さがいい。

 田畑喜八  縮緬地友禅据引留袖「落葉」
描かれているのは落ち葉なのだけど、赤くつややか。裾から色気みたいなもの、愛情が匂いたっている。着たい。

 上野為二 「一越縮緬地友禅訪問着・歓喜
これもほしい。勝ち気になれそう。鶏(ニワトリ)が描かれている。伊藤若冲と友達になれそうだ。

 山田貢 屏風「潮」
これが友禅?とびっくり。怒っているような飛び魚(トビウオ)が描かれている。すごいいい。
 
 田島比呂子 友禅訪問着「雲表に咲く」
着たい。酒井抱一のあたたかなパステルカラー、のびのびした筆致で、黄色い福寿草や鳥が描かれた巻物を思い出す。(東京国立博物館で1999年春、フランスからドラクロワの「民衆を導く自由の女神」の絵が来たときに見た。女神よりよかった)


 山田栄一 友禅揚子糊「訪問着牡丹模様中振」 これも着たい。
 稲垣稔次郎 型絵染 「野草笹匹田模様」 これも着たい。
 芹沢けい介(「けい」=金圭) 「型絵染木目模様着物」  この人はこんなのも作っていたのか。 

 大場松魚「平文輪彩箱」 松魚さん、やっぱりいい。モダンで、宇宙を感じさせるふしぎな箱。
 田口善国「秋野蒔絵八角飾箱」 光る箱。ほしい。

 北村昭斎の箱  螺鈿(ラデン)はやっぱりいいなあ。
 前大峰 「沈金夕月文盆」 ほしい。神秘的な盆。お菓子を盛ったりして使うのではなく、たまあに取り出してうっとりと見たい。

 磯井正美 「蒟醤(きんま)つらつら椿箱」  ふたに施された、2匹の青いルリアゲハ(?)がいい。ほしい。

 太田儔 蒟醤茶箱「春風」  夢が表現されているみたい。シュールレアリスムっぽい。かわいい。ほしい。
 増村益城 「乾漆朱輪花盤」 フレスコ画みたいな赤い椿。ほしい。

 蝋型鋳造置物「三禽」  足長鳥、LOVE!  すてき。古代中国の出土品みたい。プリミティヴ(原始的)でいてモダン

 増田三男 「銀象嵌鉄鴨文箱」 おしゃれ。鳥(カモ)の行列がいい。

 関谷四郎 鍛金「赤銅銀接合皿」 「〜」の模様あり? ほしい。
 奥山峰石 「銀打込象嵌花器 若芽」 すっきりしている。

 大坂弘道 「黒柿蘇芳染唐花文嵌荘箱」  もようが好み。お弁当箱のような段重ね型もいい。横(側面?)の?(字不明)も。 
 中川清司 「神代杉木画箱」 精緻。

 衣裳人形
 平田郷陽 「人形・遊楽」 手に持ったバドミントンの羽を見る少女。すごいいい。
 秋山信子 「浜下り」 沖縄(琉球)の巫女のような女性か? テーマがいい。踏み出した右足がいい。

 吉田文之 「撥鏤(ばちる)装身具(ブローチ)」 すごいほしい! 赤いブローチ。清少納言枕草子をおもう。「雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを池よりとりあげたる。葵のいと小さき。なにもなにも小さきものは、みなうつくし。」

 本美濃紙、石州半紙  紙につけられたラベル(なんと言うのだろう)がかわいい。白地に赤いハンコ。篆刻って、す、て、き! 
 玉鋼がほしい。

 隅谷正峯の脇指  あいかわらず日本刀のよさがわからない。でも、このぐらいの長さ、幅だと、持ったときの重さが気持ちいいんじゃないか、と思った。



 近藤悠三「染付岩文壺」
 田村耕一 鉄絵「銅彩椿文壺」
 志村ふくみ 紬織「鈴虫」
 高橋敬典 「姥口釜 八方面取」

 黒田辰秋 「拭漆チーク飾筥」 
 秋山逸生 木象嵌「縞黒檀珠文八角箱」

 鹿児島泰蔵 「紙彫塑人形・延寿雛」
 市橋とし子 「桐塑紙貼「風の音」」

 小鹿田焼技術保存会 飛鉋尺三寸皿

 青白磁というものがあることを知った。

 東京国立近代美術館工芸館『近代工芸の名品―花』で出会い、再会した物や作家もあった。松田権六さんとか三代徳田八十吉、高村豊周とか。

 以上、「ほしいほしい」言っている感想文おわり。


 同時開催の「数寄者達[琳派以後の方法]」
秋の東京国立近代美術館「琳派 RINPA」展がよかったから、期待していた。がっくり。琳派は室内・住居空間を豊かにしてくれる。しかし、本展は住みたくない部屋。「琳派」のタイトルにびっくり。こういうのって、消費者(観覧者、チケットを買った人)に対して、商品(展覧会)の偽表示ではないか?
 常設展の伝尾形光琳「萩図」、なごむ。
 鶴岡政男「みどりの女」 はじめて見た。いい!
 ミュージアム・ショップに紙(和紙)の見本帳があった。おなじ白でも、ふだん使っている上質紙・再生紙とは質感がちがう。あたたかく、やさしい感じ。桃色やそのほかの色の紙も挟まれている。見本帳なのだけど、いい感じであった。